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2019年11月 1日 (金)

[Binj 216] γ Perの食について

大島@倉敷様より

要旨:軌道周期14.6年を持つ明るい食連星γ Per(V=2.93)

ぎょしゃ座ゼータ型=低温度巨星+高温主系列星の連星系)がこの11月22日を中心にした10日間程度の食が予報されています(食の中心日には誤差があります。最も後の可能性では年末ころ)。これは、1990年に初めて食が観測されて以来、人類が目にする2回めの食ですのでぜひ観測に取り組んでみてください。
 
明るい食連星の一つであるγ Perは、その複合したスペクトルから分光連星であることは20世紀前半にはわかっていました(文献1)が、その後食を起こす可能性がわかり、初めて食が観測されたのは1990年9月で、その際には日本の観測者が活躍し貴重な測光データが得られました(文献2,3)

しかし、その次に起こった食(現在から言うと前回の食)は2005年4月であり、観測するには季節がよくなく、測光データは得られていません(分光観測はカナダのドミニオン天体物理観測所で実施された)。つまり、測光観測では、まだ2回めの食のデータは得られていません。
現在わかっている軌道周期は、分光観測から知られている周期で約14.6年(知られている3つの値は、文献(4)によれば各14.64年,14.60年, 14.593年)ですが、それ以上の精度のよい周期は測光観測により食の間隔から確定しなければなりません。それが、今回の観測で始めてわかるようになる訳です。

正確な食の中心時刻を決定するには

(1)観測時期

添付の光度曲線を見ればわかるように、食外の観測を含めて、第1接触(部分食の始まり)、第2接触(皆既食の始まり)、第3接触(皆既食の終わり)、第4接触(部分食の終わり)付近、減光部、復光部のスロープを正確に測光することが重要です。

(2)測光バンド

すべてのバンドでの観測が重要です。主星のスペクトルはG型なので、短波長の測光バンドほど減光量が大きく、感度が低くCCDが苦手とするUバンドのデータも貴重です。

(3)比較星

対象天体が明るいので、比較星も明るくなければ測光精度がかなり悪化してしましす。比較星には3度ほど離れたτPer(V=3.96)
これも周期4年の食連星ですが今年は食を起こしません)をお勧めします。色もよく似ているので低高度による系統誤差も生じにくいです。
なお、最近の赤澤秀彦さんによるミラのCCD観測では、口径3cmの100mmレンズで等級差2等の比較星を使ったものの方が、口径25cmで同一視野内の暗い比較星(等級差7等)を使ったものより精度は5倍ほど良いという結果が出ています。

1990年9月の食の中心はJD=2448150.5でしたから、最も長い周期である14.64年を採れば食は年末になりますが、この3つの周期のうちでおそらく最も精度が良いと思われる周期は14.593年で、この周期だと11月22日ころが食の中心となります。(仮に3つの周期のどれもが同じ精度であると仮定しても、観測の準備は、最も早い予報に合わせるべきという意味でも、「11月22日を中心にした9日間」という予報に従うべきでしょう。もしその期間に食が起こらなければ、後にずれている可能性が高い)

いずれにしても、今回の食の観測から、次回以降はもっときちんとした予報が可能になります。その意味でも今回の観測の意義が理解できると思います。
 
γ Perの謎

年周視差が比較的大きいのでこの系までの距離は正確に求まります。そして2005年の2回めの食のCCDによるスペクトル観測から、完全に分離した2つの成分星ごとのスペクトルが得られました。それらの結果、G型巨星の質量と光度が共に大きすぎる値を示していることがわかりました。さらに、この連星系の2つの成分星が同時に生まれたとすると、HR図上での理論的な進化経路とは合わず、G型巨星の方がA型主系列星より2.5倍若くなければなないこともわかりました。
これらを説明する仮説としては、もともと3重連星系として生まれたものが、第3体が合体して現在のG型星になったというものがあります。さてこれが正しいのかどうか、どうやって証明すればよいのでしょうか。
 
 
参考文献
(1)McLaughlin, D. B. 1938 ApJ.88.358
"A Note on the Spectrum and Radial Velocity of γ Persei"
(2)Griffin, R. F. 1991 S&T.81.598G
"Gamma Persei Eclipsed!"
(3)Griffin, R. F., et al. 1994 IAPPP.57.31
"The Eclipse of Gamma Persei"
(4)Pourbaix, D.1999 A&A.348.127
"Gamma Persei: a challenge for stellar evolution models"
(5)Griffin, R. Elizabeth 2007,IAUS.240.645
"γ Per: Bright, but Ill-Understood"

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